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2024年05月20日 更新

防災講演会 「大雨避難の手順とタイムリミット ~市民が自ら安全確保~」に対する質問と回答

 

2024年3月9日に行われた講演会に対する質問について、講師の岐阜大学 特任准教授 村岡治道(むらおか  はるみち)さんに回答していただきました。

 

 

 

  質問 回答
Q1 安芸高田市の防災対策は逆行しています。(多治比川の水位を上げています。先生はどう思われますか。) 多治比川のことを承知していないため、個別事案にコメントできません。
ただし、一般論として水位の見直しは国土交通省の定める設定要領(例えば、https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/bousai/saigai/suii/pdf/kiken_suii.pdf)に従えば可能です。
他方、私の講演会の重要ポイントである「“説得”の時間が想定外になっている」、「人によって避難完了の所要時間は千差万別である」などは、上記設定要領では未考慮です。このため、「逆行している」という印象をお持ちになったと推察します。
原因は、「安芸高田市の防災対策」ではなく、「設定要領」にあると指摘することも可能です。
Q2 大雨時に田んぼの水を見に行く高齢者をどうにかしたいです。声をかけるとしたら、どう声をかけますか。(消防団員より) 心配で様子を見に行く人には「心配なら逃げましょう」と声かけすることを提案します。
ここで、2パターンを例示します。
パターン1 : 現地確認して危険と判明した場合、そこから避難を開始することになります。しかし、避難完了には膨大な時間を要するはずです。結果として「早めの避難完了」を失敗することが懸念されます。
パターン2 : 現地確認して安全と判断した場合、避難開始タイミングを先送りすることになります。そして、危険が目前に迫ってから、慌てて脱出を開始します。典型的な避難失敗パターンす。
※上記①②いずれも、現地を確認したくなるほど心配ならば「逃げるが勝ち」と心得て、避難開始を促してください。心配になったときこそが避難開始のラストチャンスです!(これを逃せば、脱出になります)
Q3 トンネルに逃げるのは良いのでしょうか。高齢者に対する話では逃げないという選択肢はない、という発言で良いのでしょうか。逃げれないのが実情では?

トンネルに逃げることで「一時的な安全確保」を期待できますが、トンネル出口が土砂で埋もれて閉じ込められる懸念が残ります。閉じ込められた避難者に加え、土砂の除去作業に従事する職員のことも考えると、「トンネルに逃げることは基本的に禁止(特段の理由があれば、やむを得ない。ただし、作業員を危険にさらす事になる)」と考えます。

「逃げれない」理由を整理すると「逃げれない理由に対策を講じれば、逃げることが可能となる」はずです。「○○すれば逃げることができるので、○○という条件を早期に整えよう。」とお考えください。さらには、「赤の他人(捜索隊・救助隊)を危険にさらすことは絶対にしない」ということも優先順位の高い判断基準に据えてください。

Q4 水害、地震災害には必ずと言っていいくらい停電になると思いますが、ポータブル電源は準備するべきなのでしょうか。少々高価なので購入しかねています。YouTubeで出てほしいです。是非お願いします。 停電は、家電製品の使用不能に加えて、断水を引き起こすこともあります。オール電化の場合、食事の準備もできません。これらの問題すべてをポータブル電源で解決することは困難です。まずは、停電により「できなくなること」を洗い出してください。その結果に対して、「ポータブル電源で対応できること(スマホ充電など)」、「発電機があればできること(ポータブル電源の充電など)」、「高出力・連続発電可能な発電機でしかできないこと(冷蔵庫やエアコンの使用など)」、「カセットボンベでできること(調理、発電、暖房など)」など、対策の選択肢を探してください。人に聞いたり、ホームセンターで質問したり、ホームページやYOUTUBEサイトで情報を探し、体験談などを参考にしてください。
Q5 村岡先生は、今日言われたタイミングで避難しておられますか。 この質問には、いくつかの回答を示します。
①「避難したことがあるか」という問いであれば、「避難する必要がないので、避難したことがありません」という回答になります。これは、神戸から岐阜へ転居した時、大雨避難の必要のない地域(ハザードマップの危険区域の外)で住まいを確保したためです。
②「今日言われたタイミングで避難している」との問いかけには「いいえ、それよりももっと前に避難完了しています。具体的には、岐阜に引っ越しした2014年5月の時点で大雨避難は完了済みです。」という回答になります。
③「避難している?」との問いかけには、「イメージトレーニングなら数え切れないほど体験済み」と回答します。大きな被害が予想される場合、それが岐阜以外でも「私がそこの住民だとしたら、どのタイミングで何を行うか」、「家を出発するタイムリミットをいつにするか」というイメージトレーニングを何度も行っているためです。
Q6 早めに避難したとしても、避難をした人の確認を消防行政が行う必要がある場合、避難者が自ら連絡すべきと思いますか。行政連絡がつかないなどの事が起きますが、良い方法はありますか。避難した地域に確認しに行かなくて良い方法はありますか。 消防行政が確認する、または消防行政へ個別に連絡するという手順は、行政の負担を無駄に増やすので回避して欲しい手順です。
自主防災組織があるなら、避難者が自主防災組織(の担当者)へ自ら連絡するという手順が一案です。連絡手段は、電話、メール、LINEなどから事前に取り決めることが必要です。自主防災組織が消防行政と一括してやりとりすれば、消防行政の負担は激減します。なお、自主防災組織は「安全確保可能な場所」に移動完了した上で、避難者や行政と連絡することが大前提です。
個人でできることは、隣近所と声を掛け合い、一緒に避難することです。こうすれば、自主防災組織への避難完了報告もまとめて行えます。避難完了確認や逃げ遅れた人の把握という問題は解消することが期待できます。
Q7 高齢者など避難に不安、抵抗のある方の気持ち(避難生活への不安、トイレなど身体上の理由・・・?)の理解、対応(説得)の工夫が知りたいです。 「最寄りの避難候補施設の設備が不便・不都合」、「遠方の避難候補施設は遠くて移動が難しい上に、顔見知りがいなくて不安」という事情を講演後の質疑応答で取り上げました。
対応策が「仲良しグループで早めの避難開始」です。
岐阜では「(遠方の)○○施設に専用スペースを準備しました」、「VIP席です」、「お急ぎください(他の人が使うかもしれません)」と、テレビショッピングのセールストークのような説得方法を提案しています。「逃げなきゃ損」、「今逃げればお得♪」と思わせるような工夫も“アリ”だと考えています。
Q8 避難所に全員が収容できるキャパシティがない場合、自宅が安全と判断できれば「逃げない」選択はあり得ますか。 「条件付きであり得ます」と回答します。重要ポイントは「安全」と判断する基準です。
当日配付資料1ページ目の「1.避難の必要性と目的を確認しましょう」で選んだ「守りたいもの全て」を守ることが可能か?想定外が起きても後悔しないか? を厳しく自問ください。
Q9 消防団の避難の呼びかけのリミット設定をしてほしいです。大雨警報が出てる中での巡回制限の目安もほしいです。冠水道路を走ることが多く危険です。 消防団の最高責任者は市長ですので、石丸市長のご英断に期待します。
Q10 家族に在宅酸素が必要な者がいます。県内には親戚もなくクリスタルアージョ以外に避難可能な場所もありません。どうしたらいいのか、具体的に考えれば考えるほど、わからなくなります。広いホールに避難させることにも心配があります。病院も施設も受け入れが難しいと聞きます。 この事案は、当事者だけでは解決できないケースです。「クリスタルアージョ」だけが候補施設なら、そこでの受け入れ体制(パーティション?電源?ベッド?)の検討を身近な人(民生委員?保健師?)を巻き込んで行って欲しいです。
Q11 川が増水して道路に溢れると孤立します。歩いて逃げるには高齢です。早目にタクシーというのも中々、早期に避難所は開設されません。 岐阜でもこのご指摘はよくいただきます。避難所だけが避難候補施設ではありません。分散避難先の選定にも取り組んでください。移動手段毎に所要時間の洗い出しが不可欠です。大雨に関する情報の活用タイミング(避難指示が出てから行動するのか、レベル1(早期注意情報)やレベル2(注意報)を合図に何をする(何ができる)のか?:当日資料10~11ページ目参照)を検討する余地があると考えます。
Q12 私は消防団員です。タイムリミットをいつにするかが判断に迷いそうです。 【再掲】消防団の最高責任者は市長ですので、石丸市長のご英断に期待します。
Q13 避難通知をして、不幸にも事故等をされた通知をした者は責任は? この議論も自治会長や防災リーダー、中高の校長としています。
一般論を整理します。
自主防災活動はあくまでも自主活動であり、市から委嘱されている役・職務でなければ、責任を負わないはずです。あるいは、責任を負わない範疇で活動するべきです。情報を発信するなら、責任を問われないタイミングで行ってください。すなわち、事態が悪化する前(=早めの避難開始)です。責任が問われるようなタイミングでは、「自己責任で判断」と明言することも一案です。そもそも、市町村行政が出す避難情報でさえ、命令ではありません。自主防災活動であれば、命令することは筋違いであり、責任を負うという議論自体が自主防災活動の範疇を逸脱していると言えます。
他方、市から公的な責任を任されている役・職務であれば、行政側のお作法で判断されると推察します。すなわち、個人の責任を問われることはなく、任している行政が責任を引き取るのでは? と予想します(行政論をそこまでわかっていないので、市から正しい見解を湿された方がよい事案です)。
Q14 避難場所は公共施設でなくて良いと思うが、実際どこに避難するかは決めれません。滞在できるかどうか。 居住地域内にこだわらず、遠方まで対象エリアを拡大して検討ください。移動手段とそれによる移動所要時間、受け入れの可否、居住性の優劣も検討ください。
Q15 以前の大雨洪水で河川が土砂で埋まり、とても浅くなっており大雨の度に洪水を心配しています。土砂を取り除いていただきたいと川土手を通る度思っています。 砂防行政もしくは河川行政は、財源と人手が確保できる範囲で取り組まれていると考えます。しかし、安芸高田市に限らず、全国の市町村は余力がなく、住民のニーズ全てに対応することは不可能であると理解ください。
Q16 ペットがいる時の避難方法や場所等について知りたいと思いました。(避難場所に動物が苦手な人もいると思うので)吠えたりしても困るので・・・ 居住地域内にこだわらず、遠方まで対象エリアを拡大して検討ください。移動手段とそれによる移動所要時間も検討ください。現実問題として、ペットを受け入れてくれる施設は数が限れら、早い者勝ちであるはずです。(岐阜でも議論していますが、思うように解決できていません)

 

 

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