○安芸高田市環境基本条例
平成22年3月18日
条例第9号
目次
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 市、市民等、事業者及び所有者の責務(第4条―第8条)
第3章 環境の保全に関する基本方針(第9条)
第4章 環境の保全に関する基本的な計画の策定(第10条―第12条)
第5章 環境の保全に関する基本的施策の推進(第13条―第19条)
第6章 環境審議会(第20条―第22条)
附則
安芸高田市は、市域面積の約8割を森林が占め、豊かな山々に囲まれ、日本海に流れる江の川と瀬戸内海に流れる太田川の源流地帯に位置して分水界が横断し、水と緑が調和した細やかで落ち着きのある景観を形成しており、食糧生産の盛んな農業地帯として発展してきた。また、古墳群、毛利元就にゆかりのある史跡その他の歴史的資源や遺産を有し、神楽、花田植等の郷土芸能を継承し、伝統文化を育んできたことは、太古より豊かな生活環境が存在したことを表している。
一方、私たちは、石油、石炭、天然ガス等の化石燃料資源を大量に消費し、便利で快適な生活を享受してきたことにより、環境への負担を著しく増大させてきたが、本市もこの影響を免れ得なくなってきている。
恵み豊かな環境の恩恵を享受することは、私たちが健全で安全かつ快適な生活を営むうえでの権利であるとともに、この環境の豊かさを維持し、安全な食糧生産を可能にし、更に向上させ、将来の世代に継承していくために、積極的に行動することもまた私たちの責務である。
私たちは、環境が有限なものであることを認識し、社会の経済活動や生活様式のあり方を見直し、昔からの財産である「もやい」や「もったいない」の精神を活かし、一人ひとりが環境をより良くするための努力を重ね、本市の自然環境や田園風景を守り、未来へ継承していくとともに、地球上のあらゆる生命が共存できるようにする取組を推進するために、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、環境の保全について基本理念を定め、安芸高田市(以下「市」という。)、市民等、事業者及び所有者の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する基本となる事項を定め、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって現在と同じように安全に食糧生産ができる良好な環境を守り、現在及び将来の市民の健康で文化的な生活を確保することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
(2) 環境の保全 人の活動による地球全体の温暖化、オゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、市民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
(3) 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭その他の環境の悪化によって、人の健康又は生活する上での環境に係る被害が生ずることをいう。
(4) 市民等 市の区域内(以下「市内」という。)に住所若しくは居所を有する者、市内に勤務若しくは通学する者、市内を旅行する者又は市内を通過する者等をいう。
(5) 事業者 市内において事業活動を営む個人又は法人をいう。
(6) 所有者 市内の土地又は建物について、所有、管理又は使用の権利を有する者をいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全は、自然と人とのふれあいを確保することにより、人と自然とが共生できる社会の実現を目指し、水と緑の豊かな環境が将来の世代へ継承されるように、適切に行われなければならない。
2 環境の保全は、恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨として、市、市民等、事業者及び所有者の公平な役割分担の下に、自主的かつ積極的に行われなければならない。
3 環境の保全は、それが人類共通の課題であるとともに市民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題でもあることにかんがみ、すべての事業活動及び日常生活において自主的かつ積極的に推進されなければならない。
第2章 市、市民等、事業者及び所有者の責務
(市の責務)
第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、次に掲げる事項に関し基本的かつ総合的な施策を策定し、実施する責務を有する。
(1) 公害の防止に関すること。
(2) 自然環境の保全に関すること。
(3) 野生生物の種の保存及び生態系の多様性の保護に関すること。
(4) 人と自然との豊かな触れ合いの確保、良好な景観の保全及び形成、歴史的及び文化的遺産の保護等に関すること。
(5) 安全な食糧生産を担保することができる環境を維持し、確保すること。
(6) 廃棄物の適正処理及び減量並びに再生利用に関すること。
(7) 資源及びエネルギーの有効利用に関すること。
(8) 二酸化炭素の排出の抑制に関すること。
(9) 前各号に掲げるもののほか、環境の保全に関すること。
(市民等の責務)
第5条 市民等は、環境の保全上の支障を防止するため、資源及びエネルギーの浪費を避ける等日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、市民等は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、事業活動を行うにあたっては、その事業活動に伴って生ずる公害を防止し、又は事業活動に起因する環境への負荷の低減その他環境の保全のために必要な措置を自らの責任において講ずるものとし、物の製造又は加工、販売その他の事業活動を行う場合にあっては、次に掲げる原則によらなければならない。
(1) 再生資源その他の環境への負荷の低減に有効な原材料、役務等を利用するよう努めること。
(2) 製品その他の物が廃棄物となったときに、その適正な処理が図られるようにすること。
2 前項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、事業活動に伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
(所有者の責務)
第7条 所有者は、環境の保全上の支障を防止するため、自らの責任において土地又は建物の適切な管理等必要な措置を講ずるものとし、市が実施する環境の保全に関する施策に積極的に協力し、環境への負荷の低減に努めなければならない。
(国及び他の地方公共団体との協力)
第8条 市は、広域的な取組を必要とする環境の保全に関する施策を実施するにあたっては、国及び他の地方公共団体と協力して推進するように努めるものとする。
第3章 環境の保全に関する基本方針
(環境の保全に関する施策の策定等に係る基本方針)
第9条 市は、環境の保全に関する施策の策定及び実施にあたっては、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を指針として施策相互の連携を図りつつ、総合的かつ計画的に行わなければならない。
(1) 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の自然的要素が良好な状態に保持されること。
(2) 生態系の多様性の保護、野生動物の種の保存等、地球上のあらゆる生命の共存が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的及び社会的な条件に応じて体系的に保全されること。
(3) 人と自然との豊かなふれあいが保たれ、自然との調和を基調とした良好な景観の形成並びに歴史的及び文化的遺産の保存が図られること。
(4) 潤いと安らぎのある環境の保全が図られること。
(5) 廃棄物の減量及び適正処理並びに資源の有効利用を推進することにより、環境への負荷の低減が図られること。
第4章 環境の保全に関する基本的な計画の策定
(環境基本計画)
第10条 市長は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、地域の自然的及び社会的な特性を考慮して、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 環境の保全に関する長期的な目標
(2) 環境の保全に関する施策に係る基本的な事項
(3) 前2号に掲げるもののほか、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 市長は、環境基本計画を定めようとするときは、あらかじめ第20条に規定する安芸高田市環境審議会(以下「環境審議会」という。)の意見を聴かなければならない。
4 市長は、環境基本計画を定めたときは、速やかに、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
(年次報告)
第11条 市長は、市の環境の現状及び環境基本計画に基づく環境の保全に関する施策の実施状況を明らかにするための年次報告書を作成し、公表しなければならない。
(総合的調整)
第12条 市は、環境に関する施策を策定し、及び実施するときは、環境基本計画との整合を図らなければならない。
2 市は、環境の保全に関する施策の効率的かつ体系的な推進を図るため、環境の保全に関する施策について総合的な調整を行い、必要な措置を講ずるものとする。
第5章 環境の保全に関する基本的施策の推進
(規制の措置)
第13条 市は、環境の保全への支障を防止するため、公害の原因となる行為その他の人の健康又は生活環境の保全に支障となるおそれのある行為に関し、必要な規制の措置を講ずるよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第14条 市は、市民等、事業者及び所有者が自らの行為に起因する環境への負荷の低減その他環境の保全等に関する活動をすることとなるように誘導するために必要があると認めるときは、その活動をする者に対して経済的な助成を行うために必要な措置を講じなければならない。
(監視、測定、調査、研究等)
第15条 市は、環境の保全に関する施策を適正に実施するため、環境の状況を把握するとともに、必要な監視、測定等の体制を整備し、公害の防止、自然環境の保全その他の環境の保全に関する事項について情報の収集に努めるとともに、環境に係る調査、研究等を実施し、その成果の普及に努めるものとする。
(環境影響への事前配慮)
第16条 市は、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業を行う事業者が、あらかじめその事業による環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、環境の保全について適正に配慮することを促すために必要な措置を講ずるものとする。
(資源の循環的な利用等の推進)
第17条 市は、持続的発展が可能な社会の実現のため、市民等及び事業者自らが、社会の経済活動や生活様式を見直し、資源及びエネルギーの消費の抑制並びに資源の循環的な利用並びに廃棄物の減量化が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。
(環境学習及び環境教育の推進及び情報の提供)
第18条 市は、市民等及び事業者又はこれらの者の組織する団体が自発的に行う環境の保全に関する活動が促進されるように、情報の提供、広報活動の充実、資料の提供、学習の場の確保等の必要な支援の措置を講ずるものとする。
(市民等の意見の施策への反映)
第19条 市は、環境の保全に関する施策を推進するため、市民等及び事業者又はこれらの者の組織する団体の意見を反映するように努めるものとする。
第6章 環境審議会
(環境審議会の設置等)
第20条 市は、環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定により、環境審議会を置く。
(所掌事務)
第21条 環境審議会は市長の諮問に応じ、環境の保全について次に掲げる事項を調査審議する。
(1) 環境基本計画の策定及び変更に関すること。
(2) その他環境の保全に関する重要事項に関すること。
2 環境審議会は、前項に定める事項について、市長に意見を述べることができる。
(組織)
第22条 環境審議会の委員(以下「委員」という。)は、11名以内をもって構成する。
2 前項に定めるもののほか、環境審議会の組織及び運営について必要な事項は、規則で定める。
附則
この条例は、公布の日から施行する。